紙苑

 隔年開催される全国規模の和紙ちぎり絵展ですが、今回で18回目。高知県では18年振り2度目の開催です。
今回は高知地元作品35点、海外招待作品7点、全国選抜468点、本部作品4点、の総点数514点となりました。

 今から50年以上前、亀井健三主宰(鳥取県米子市、2002.12.没)が、全国和紙ちぎり絵サークルを
鳥取県で立ち上げました。
『和紙ちぎり絵』の草創期は、鳥取県の因州和紙や島根県の出雲民芸紙などの厚手色和紙を主に使用していました。
厚紙で貼ったちぎり絵は、油絵のように重厚感はありますが、水彩画のような透明感が表現できず、
『和紙ちぎり絵』の世界を広げるためには、何か新しい素材と手法を見つけ出す必要がありました。
幻の紙と言われる薄紙、別名「カゲロウの羽」と称される世界で一番薄い紙「土佐典具帖紙」のことを知り、
1976年11月、亀井主宰は、その「土佐典具帖紙」を漉く田幸雄氏(2001年人間国宝に認定)に会うべく高知県伊野町(現在いの町)を訪ねます。
そこで、亀井主宰の探し求めていた和紙「土佐典具帖紙」との運命的な出逢いをします。
この色典具を重ね合わせることによって重色、混色、明暗のグラデーションなど自由自在にでき、
これまでの厚手色和紙では困難だった豊富な色彩、微妙な色調が自由に作り出せることが判ったのです。
田幸雄氏のお力添えをいただき、繊細な色合いを表現できるようになり『和紙ちぎり絵』の世界が大きく花開きました。
一般絵画として無限の可能性も広がり、薄紙を重ね貼るという特徴が、全国和紙ちぎり絵サークルの代表的な手法となっていきました。
その後、当時、上田剛司氏が事務局長を務められた高知県手すき和紙協同組合をはじめ、
鳥取県の因州和紙協同組合、岐阜県の美濃和紙、島根県の出雲民芸紙の皆々様のご尽力と多彩な和紙によって
『和紙ちぎり絵』は全国へと広まっていきました。
この邂逅と紙の縁がなければ現在の私達の『和紙ちぎり絵』は存在していないと言っても過言ではないでしょう。

 現在では紙漉き職人さん、染色職人さんの努力により画材としての染和紙が多種多様になりました。
愛好家が『和紙ちぎり絵』を楽しむことにより伝統技術の職人さんを助ける、職人さんが新しい和紙を開発することが、
愛好家を育てる、という「良い関係」が生まれてきています。

 全国和紙ちぎり絵サークルは、伝統的工芸品である和紙の普及と発展を志に活動しています。
そのことを会員一人一人が、今一度見直し、今後の活動に役立てていきたいと思います。
「民藝」が日常的な暮らしの中で使われてきた手仕事の日用品の中に「用の美」を見出したように、
『和紙ちぎり絵』も日常に溶け込む芸術でありたいと願っています。

 最後に、本展の開催にあたりまして、ご尽力いただいた皆々様、後援関係各位に心より感謝申し上げます。
満開の桜のように『和紙ちぎり絵』の柔らかさと優しさ、
和紙の美しさを感じていただき、皆々様のより良い人生の一端となれば幸いです。

 

2019年4月

全国和紙ちぎり絵サークル
本部長 矢 野 伸 明

 

紙苑第24集作品の一部紹介

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