紙苑

 10年前の「ちぎり絵通信」15号に朝日の記者で有名な(故)扇谷正造さんの「四十初惑」(四十ニシテ初メテ惑ウ)の文章の一部を紹介しました。「四十不惑」(四十ニシテ惑ワズ)は人生五十だった時代のこと。いま日本の平均寿命は男女とも八十歳前後、そうであれば自ら人生設計も変わるはず。扇谷さんの提案はこうです。

「四十初惑」(四十ニシテ初メテ惑イ)
「五十立志」(五十ニシテ志ヲ立テ)
「六十精励」(六十ニシテ事ニ励ミ)
「七十成就」(七十ニシテ事ヲ成就シ)
「八十而熄」(八十ニシテ引退スル)

 さて全国和紙ちぎり絵サークル主宰の私、扇谷さんの提案を我が身にあてはめて考えました。確かに教職にあった四十代、ロシア語の翻訳、出版業に協力と超多忙の毎日なのに、ちぎり絵に出会って人生航路180度の大転換、「四十ニシテ大イニ惑ウ」。五十代は定年前退職、ちぎり絵一筋という「志ヲ立テ」たのは確かです。六十代はちぎり絵サークルづくりと和紙販路の開拓のため妻と二人三脚の全国行脚で「事ニ励ミ」、七十代は、日本だけでは足りずアメリカ、カナダ、フランスと、中国には7〜8回も行ってどうにか「事ヲ成就シ」た感じ。そしていま丁度「八十ニシテ引退スル」かどうか思案中。
 思えばサークル活動を始めて今年で満30年、この間にサークルまわりの合間合間につくりためた大小百数十点の作品、ほとんど手放すことなく自宅にかかえこんでいるのを、全国サークルの皆さんに、この際見ていただく機会をということで、がんぴ舎の絶大なバックアップで今回の米子での個展、作品集刊行と相成った次第です。
 作品は「通信」41号にかいた“学生期”、“遊行期”、“家住期”、“林住期”の制作年順序でなく、バラ、ヒマワリ、その他の花、大山など山々の景観、戦争と平和の問題を訴える心象風景などに分類しています。

1999年9月9日
全国和紙ちぎり絵サークル
 主 宰  亀井健三
 わが〈紙苑〉は1集(1979年)から7集(1988年)までは掲載作品を全国から選抜、8集・岡山(1989年)以降は全国展出品の全作品を掲載してきた。9集・札幌(1989年)、10集・仙台(1991年)、11集・日中ハルビン(1992年)、12集・福山(1993年)、13集・旭川(1995年)、14集・鹿児島(1997年)。
 今回の15集(1999年)は全国展に代え、亀井個人展の図録(作品集)として使わせていただいた。私の30年を超える画歴のうち、最終の2年近くは自宅アトリエにこもっての制作だったが、あとのほとんどは全国まわりの多忙の合間での仕事、制作品のうち公的機関への若干の寄贈品以外は、大小百数十点を自宅にかかえこみ、家の中の各部屋はまさに作品で満席(?)状態になった。
 本書には「亀井健三/ちぎり絵作品展※」出品作を含む131点を収録。さらに末尾には作者の年譜を兼ね、自伝、画歴、主要作品の制作動機や解説なども含んだ手記を併載した。
 本作品集が毎回の全国展出品者の膨大な努力の結晶の何分の一かの評価を受けることができれば主宰として望外の幸せである。

1999年10月8日 81回目の誕生日を迎えて
全国和紙ちぎり絵サークル
 主 宰  亀井健三

紙苑第15集(亀井健三作品集)の紹介

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